私が先生と知り合いになったのは鎌倉である。その時私はまだ若々しい書生であった。暑中休暇を利用して海水浴に行った友達からぜひ来いという端書を受け取ったので、私は多少の金を工面して、出掛ける事にした。
夏目漱石 こころより引用
夏目漱石の長編小説『こころ』の冒頭に登場する海岸は、直接名指しはされていないが材木座海岸のことらしい。
『こころ』は晩年の作品である。
明治から大正へ移り変わる時代、晩年の漱石は鎌倉の貸別荘で過ごしていた時期があったようだ。
これについては日本近代文学の研究者である藤井淑禎氏が『紅が谷の青い空・再説』で『こころ』に登場する海水浴場は何処なのか面白く推理している。詳細を知りたい方はネット上に公開されているから検索して探すとよいだろう。
前置きはこれくらいにして本題に入ろう。
材木座海岸には幽霊が出るという噂がある。果たしてどのような根拠があるのだろうか?
ちょっと調べてみよう。
材木座海岸へのアクセス
徒歩で行かれる方は少ないと思うけれども、私は鎌倉駅から25~30分くらい歩いた気がする。
国道134号線沿いに少々割高な県営の駐車場がある。
他にも有料パーキングが点在しているので、多少離れていて問題ないのならそちらの方がリーズナブルで良いかもしれない。
材木座海岸で何があった?
1994年(平成4)のやや古い新聞記事であるが、神奈川県の海水浴場の人出状況に関する記事を見つけた。
816万人が県内の海水浴場に赴き、そのうち由比ガ浜・材木座海岸の利用者は95万人であった。
県内の水難死亡事故者は21名と記されている。
母数からしたらかなり少ない死亡者数に思えるが、神奈川県の救助隊は優秀なのだろうか?
材木座海岸に直接関係する記事に以下のものがあった。
・裸の赤ちゃんの遺体を発見
・日光浴中にトラックにひかれて死亡
・サーフィンを楽しんでいた人が溺れて死亡
・付近の海上で自殺と思われる遺体を発見
100万人近くの観光客が訪れる場所で事件が起こらないはずが無いよね。これを霊云々の仕業と言ってしまったら殆どの海水浴場が心霊スポットになってしまうのでは…。と思った次第です。
終わりに
材木座海岸に幽霊出没の噂が流布されているのは材木座中世遺跡や由比ヶ浜南遺跡の存在が大きい。
後日記事にする予定の由比ガ浜もこれらの遺跡が霊の根拠となっているようだ。
材木座中世遺跡では1953年(昭和28)に第1次、第2次、1956年(昭和31)に第3次発掘が行われ、910体の白骨が見つかった。時代は鎌倉末期、つまり新田義貞の鎌倉攻めに関係する戦死者の白骨では無いかと推断されている。現地には万霊供養塔(骨塚)が建っている。
ただ、材木座中世遺跡は海岸からはやや離れた場所にある。
由比ヶ浜南遺跡の方は由比ガ浜の記事で詳しく述べるつもりであるが、こちらは戦死者の白骨が殆ど発見されなかったことから共同墓地的な場所だったと考えられている。
由比ガ浜に関しては↓に詳細のリンクを貼るので気になる方はどうぞ。
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