富士山麓の聖域!忍野八海の霊場を巡ってきたので紹介しよう

忍野八海

富士五湖ト同シク曽テ火山堰止湖タリシ忍野湖今ノ忍野盆地ヲ涵養セシ地下水ノ湧出口ガ湖水涸渇後モ尚現存セルモノニシテ今ハ八個ノ湧泉トナリ各停匯シテ八個ノ小池ヲナセリ コノ事實ハ現時ノ富士五個カ熔岩流ノ下ヨリ湧出セル地下水ニヨリテ涵養サレ居ルヲ暗示スルモノニシテ自然地質學上貴重ノ天然資料タリ

文化遺産オンライン 忍野八海より

富士五湖と同じく、かつて火山によって堰き止められた湖であった忍野湖。今の忍野盆地を涵養する地下水の湧出口が湖の涸れたあとも現存しているもので、今は8個の湧泉をなって水が溜まり8個の小さな池になった。この事実は溶岩流の下から湧出する地下水によって涵養されているのを暗示するもので、自然地質学上貴重な天然の資料である。

以上の理由から1934年(昭和9)5月1日に山梨県南都留郡忍野村の忍野八海は史跡名勝天然記念物に指定された。

かつての忍野八海は禊の地で穢れを祓う聖域として知られていた。8つある池には番号と名称が設けられている。

1~8番の霊場を散策してきたので、その由来と共に紹介しよう。

 

一番霊場 出口池(でぐちいけ)

忍野八海

天地の開ける時に動きなき御山に水の出口たふとし

南都留郡郷土誌 忍野八海 出口池 122頁より

富士で修行する者は出口池で行水し、その水を携帯して登山に挑んだと云う。無病息災のご利益があると信じられ、村人は乳飲み子を水浴させ成長を祈った。

第一番の巡礼所として跋難蛇竜王が祀られている。

 

二番霊場 お釜池(おかまいけ)

忍野八海

名称の由来は、湧き出る様子が釜の中で盛んに沸騰する熱湯のように見えたから。または昔から伝わる蝦蟇の伝説から大蟇池と呼ばれていたと云う説もある。

蝦蟇の伝説は『美しい女性が池の大蝦蟇に連れ去られ、いつになっても帰ってこず、家族は終生池の前で冥福を祈った』という誰も救われない悲話。

第二番の巡礼所として跋難蛇竜王が祀られている。

富士のねの麓の原にわき出づる水ぞ此世のお釜なりける

南都留郡郷土誌 忍野八海 御釜池 122頁より

 

三番霊場 底抜池(そこなしいけ)

忍野八海

この池に物を落とすとゆくえ知らずとなり、暫くすると何故か御釜池に浮かんでいると云う。昔の村人は底抜池で物を洗うのは神域を汚す行為だとし禁忌としたそうだ。

第三番の巡礼所として娑伽羅竜王が祀られている。

くむからに波はきえなん御佛のちかひそふかき底なしの池

南都留郡郷土誌 忍野八海 底抜池 122頁より

 

四番霊場 銚子池(ちょうしいけ)

忍野八海

名の由来は2説ある。

・銚子の形に似ているから

・祝言の日に銚子を持ったまま身を投げた花嫁がいたから

後者の詳細を見ていこう。

池畔に容姿端麗な男女がいた。やがて2人は結ばれ婚礼の儀を迎えることになった。式の最中、花嫁が不意に異様な音を発すると場内一同が驚きを隠せず目を見張る。花嫁は醜態に耐えられず、銚子を抱きながら池に身を投げ底へ沈んでいった。

いちのまる
いちのまる

どういうこと?弾みで出ちゃって恥ずかしくて自殺したということ???

第四番の巡礼所として和脩吉竜王が祀られている。

汲めはこそ銚子の池のさはくらんもとより水に浪もある川

南都留郡郷土誌 忍野八海 銚子池 122頁より

五番霊場 湧池(わくいけ)

忍野八海

富士山と縁の深い木花咲耶姫の伝説が残る池。

太古の昔、富士の噴火によって山麓は地獄と化す。住民たちはその焦熱に苦しみ咽喉は涸れ切っていた。水を求め、ひとえに神に祈れば、天から『私を信仰し尊べばあなたたちに水を授けよう』と声が聞えてくるではないか。

第五番の巡礼所として徳叉迦竜王が祀られている。

今ものなほわく池水にもる神の末の世かけてかはらぬそしる

南都留郡郷土誌 忍野八海 湧池 121頁より

 

六番霊場 濁池(にごりいけ)

忍野八海

かつては濁っていたそうだが、現在は他の泉と同様に澄んでいる。

現地の案内板には『みすぼらしい行者が一杯の水を求めたが断られ、池の水が濁ってしまったという伝説があります。』と説明されている。

この濁った池の水を容器に入れると水が忽ち清くなるという伝説もあるようだ。

第六番の巡礼所として阿那婆達多竜王が祀られている。

ひれならす龍の都のありさまもくみてしれとやにごる池水

南都留郡郷土誌 忍野八海 濁池 122頁より

 

七番霊場 鏡池(かがみいけ)

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鏡の由来は『水面に逆さ富士山が鮮明に映る』から。

現地案内板には『古くは鰶(このしろ)池とも呼ばれていました。この池の水には、すべての事の善悪を見分ける霊力があるといわれ、村内にもめ事があるときに当事者が池の水で身を清め、祈願したという伝説があります。』とある。

第七番の巡礼所として摩那斯竜王が祀られている。

底すみてのとけき池はこれそこの白妙の雪のしつくなるらん

南都留郡郷土誌 忍野八海 鏡池 122頁より

 

八番霊場 菖蒲池(しょうぶいけ)

忍野八海

菖蒲池に生える菖蒲を身体に巻くと病気が治るという言い伝えが残る。その由来は、むかし池畔に住んでいた仲睦まじい男女にある。

ある時、男が命を脅かす肺病に罹患してしまう。女は思いの余り池で身を清め三七日の祈願を試みる。21日目の満願の日『池の菖蒲を採り、身体に巻きつけると病魔が忽ちに退散するだろう』と神託を受けたため、直ちにそれを実行すると、何事も無かったかのように彼は平癒したのであった。これ以来、村では疫病退散のご利益があると有事の際には池の菖蒲を身体に巻く習慣が出来たそうな。

第八番の巡礼所として優鉢羅竜王が祀られている。

あやめ草名に負ふ池はくもりなきさつきの鏡見る心地せり

南都留郡郷土誌 忍野八海 菖蒲池 122頁より

 

終わりに

忍野八海

何故、忍野八海に心霊スポットの噂があるのだろうか?

いつ頃から噂があるのか調べてみると、2002年(平成14)に2chの『【恐怖】山梨県の心霊スポット【驚愕】』のスレでダイバーが潜って戻らなかった事故についての投稿があった。2008年(平成20)にmixiで心霊の一覧に記載されている。この頃には噂があったことが分かる。

噂の根拠はダイバーの事故にありそうなので詳細を記載する。

1987年(昭和62)7月16日、忍野八海のひとつ『湧池』にテレビ撮影のため2名が潜水したが、予定の時間を過ぎても戻ってこなかった。

2名はそれぞれ7月18日、22日に遺体となって発見された。地元のダイバーが『命綱を付けるべき』と諭したが聞き入られなかったそうだ。

湧池の底は逆円錐形になっており深さは約8m。研究者は『水温は低く、底は軟らかい珪藻土で白濁し易く視界不良で、湧出口や横穴が多く、潜るにはかなり危険な場所である』と言っている。

忍野八海は昔から神聖な場所として地元の方々に守られてきた場所である。死者を愚弄するつもりはないが、無謀なダイバーによって心霊スポットの噂が流されてしまったのだとしたら、非常に残念に思う。

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