静岡県伊東市の城ヶ崎海岸。
大室山から流れ出した溶岩が海の浸食によって削られ創り出した自然の芸術。連なる断崖は絶景を極める。
国立公園として整備され、数多の人々が集う名所となった。
私が訪れたのは確か日曜日の朝方だったと思う。家族連れや仲睦まじい男女がちらほらと散策していた。快晴だったこともあり、城ヶ崎は明るく楽しそうな雰囲気に包まれていた。
そんななか心霊スポットの噂を聞き入れ独りボッチで徘徊する私。何やら陰鬱な表情を浮かべてキョロキョロと断崖を彷徨う背中の丸まった男を見て周囲の人々は怪訝な目を向ける。
更々飛び込むつもりはないのだが、そんな風に見て取られたのかもしれない。東尋坊然り三段壁然り、断崖の景勝地はそういう場所でもあるからだ。
事件や事故の有無を探るべく過去の新聞をざっくりではあるけれども漁ってみた。
一番古い記事で1965年(昭和40)、新しいものは2022年(令和4)、計14記事を発見した。
断然自殺が多いのかと思いきや、釣り人や観光客の転落事故がかなりの割合を占めている。
柵が設けられていないので、断崖に近づき足を踏み外す人がいるようである。
私は高いところが苦手なので際には近づかなかったが、ギリギリまで行っている方々を見かけた。
またSNSでは崖に腰掛けた姿や崖下を覗いたりしている様子の画像が投稿されたりする。
こういう命知らずがひょんなことを切っ掛けに落ちてしまうのだろう。
そうやって落ちるのは自業自得だが、それに立ち会った人は本当に気の毒である。
終わりに
城ヶ崎海岸には半四郎落し物語の伝説が残る。
半四郎とおよしという仲の良い夫婦がいたそうな。
ある日、半四郎は海へ海藻を採りに出掛けました。
たくさんの海藻を背負い家に帰ろうとした瞬間、背中の海藻に引かれ海に落ち帰らぬ人となってしまいました。
それを聞いたおよしは悲しみ、海へ来ては涙を流し続けたそうです。
およしの涙が咲かせたのでしょうか?それ以来、城ヶ崎には毎年秋になるとイソギクの可憐な花が咲くようになりました。
いつしか村の人々はここを『半四郎落し』と呼ぶようになったと云います。
半四郎を海へ引いたのは海藻……?それとも……。
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