山形県西置賜郡飯豊町と同郡小国町の境界に位置する宇津峠に穿たれた旧宇津トンネル。
宇津峠は新潟県新潟市から山形県、宮城県を経由して福島県相馬市に至る重要な幹線(国道113号線)の一部であった。峠の標高は491m、頂上付近の幅員は平均5m(最少3.5m)で、最急勾配16%、連続したカーブが続く交通の難所として知られていた。また豪雪地帯なので冬季になると吹雪や雪崩が発生して通行不可になることもあった。明治期には道路維持や雪道踏みのために建てられた囚人小屋があったという。
自動車の普及に伴って宇津峠の改修が急がれた。その一環で旧宇津トンネルが開削されたのである。
旧宇津トンネル
着工:1963年(昭和38)11月
貫通:1964年(昭和39)9月
竣工:1967年(昭和42)7月
延長:949m
幅員:5.5m
高さ:4.5m
念願の開通であったが、旧宇津トンネルの寿命は短かった。
掘削工事の段階から膨張性の地質に悩まされており、坑木を駆使してやっとのことで工事が完了した。竣工後には盤ぶくれが発生し断面の縮小が続いた。これにより大型車のすれ違いが困難になってしまったほどだったという。当時の土木技術では対応できなかったのだろう。
1987年(昭和62)頃から新宇津トンネルの工事が始まり、1992年(平成4)に開通。旧トンネルの開通は1967年(昭和42)だから、たった25年しか使われなかったのである。
2024年(令和6)6月現在、飯豊町側からのアプローチは可能でトンネルの目の前(トンネル内部は立入禁止)まで行けるが、小国町側は道が塞がっている。崩落の危険性があるので、そのうち飯豊町側も立入禁止になるのではないかと思う。
旧宇津トンネルには心霊スポットの噂が流れている。
ということらしい。旧宇津トンネルは交通事故が多発した場所で、事故死した人々の霊が彷徨っているみたいな感じで語られている。
飯豊町史に『トンネル前後の道路は急勾配急カーブで、しかも積雪が多いために事故が多発し、』とあるので、確かに事故が多い地点だったのは間違いなさそうだ。どれだけ死亡事故があったのかはわからないが……。
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