河津三郎祐泰の血塚とは?曾我兄弟の仇討ちの発端となった暗殺事件について

河津三郎祐泰の血塚

河津三郎祐泰の血塚は、祐泰が刺客に襲われ命を落としたと伝わる場所である。

鬱蒼とした木立のなかに、高欄に囲われた苔生した築石塚と一基の小さな宝篋印塔、塚の裏手には河津三郎祐泰之供養塔と刻まれた石碑が置かれている。

宝篋印塔は南北朝時代頃に造られたもので、後世になってから供養のために建てられたのではないかと考えられているようだ。

河津三郎祐泰とはどのような人物なのだろうか?

 

河津三郎祐泰について

河津三郎祐泰の血塚

河津祐泰(かわづ すけやす)は平安時代後期に活躍した伊豆国の武士。父は伊東祐親。藤原南家の流れを汲む工藤氏の一族である。

いちのまる
いちのまる

いろんな氏名が出てきてややこしいですね。

河津→地名(河津荘)

伊東→地名(伊東荘)

工藤→木助(官職)+原(氏名)

藤原→不明(たぶん地名)

ってな感じです。

河津祐泰は剛腕の武将として知られている。というのも曽我物語で相撲大会の場面があるのだが、それまで負けなしだった俣野景久を投げ飛ばしているからだ。相撲の『決まり手八十二手』の河津掛けは彼の名前が由来とする説がある。まぁ、この説はかなり疑問視されているらしいが。

1176年(安元2)、同族の工藤祐経の放った刺客に矢を射られ暗殺されてしまった。祐親・祐泰父子を狙った暗殺だったが、親は生き子は死んだ。

事の発端は伊東祐親が強引に工藤祐経の所領を奪い、更には祐経の妻をも強奪して別の男に嫁がせたからである。殺されても同情の余地のない所業だ。

これの事件が日本三大仇討ちの一つ『曾我兄弟の仇討ち』の原因となった。

曾我兄弟の仇討ちについて

河津三郎祐泰の血塚

曾我祐成・時致兄弟が工藤祐経を殺害した事件を『曾我兄弟の仇討ち』という。『赤穂事件』『鍵屋の辻の決闘』と並んで日本三大仇討ちと総称されることもある。

工藤祐経は今回の主人公・河津祐泰を暗殺した人物で、曾我祐成と時致は河津祐泰の息子。息子二人が曾我氏を名乗っているのは、生母が河津祐泰の死後に曾我祐信という御家人に嫁いだからだ。

1193年(建久4)、源頼朝が催した富士の巻狩りで曾我兄弟は父・祐泰の無念を晴らすため工藤祐経を襲撃。祐経と同席していた大森隆盛は兄弟によって無残に殺害された。その後の兄弟は制止する御家人らと戦闘を繰り広げ兄の祐成は討ち死に、弟の時致は源頼朝の宿所まで押し入ったが捕縛されてしまう。

五郎忿怒云 祖父祐親法師 被誅之後 子孫沈淪之間 雖不被聽眤近 申最後所存之條 必以汝等不可傳者 尤直欲言上 早可退云々 將軍家依有所思食 條々直聞食之 五郎申云 討祐經事 爲雪父尸骸之耻 遂露欝憤之志畢 自祐成九歳 時宗七歳之年以降 頻挿會稽之存念 片時無忘 而遂果之 次參御前之條者 又祐經匪爲御寵物 祖父入道蒙御氣色畢 云彼云此 非無其恨之間 遂拝謁 爲自殺也者 聞者莫不鳴舌

吾妻鏡 第13巻より

五郎(曾我時致)は激しく怒りながら云った。

『祖父の伊東祐親が殺された後、その子孫は落ちぶれてしまったので、近づくことさえ許されないけれども、最後に思うところがあるから、あなた方を通して伝えるのではいけない。直にお伝えしたいので、早くそこを退くのだ』

頼朝様は思うところがあるので、直接お聞きになった。

五郎(曾我時致)は云った。

『工藤祐経を討ち取ったことは、父(河津祐泰)の死骸の恥を雪ぐため、遂に鬱憤が露わとなり志してしまいました。祐成が九歳、時宗(時致)が七歳のとき以降、繰り返し復讐の思いが起こり、片時も忘れませんでした。そして遂に果たしたのです。次に頼朝様の御前に参じた理由は…。頼朝様は工藤祐経を寵愛されていたばかりでなく、祖父の伊東祐親を嫌っていました。あれといいこれといい、頼朝様に対して恨みが無い訳ではありませんので、お目にかかってから自殺しようと考えたのです。』

聞いている者で舌を鳴らさない者はいなかった。

 

終わりに

河津三郎祐泰の血塚

源頼朝は曾我時致の行いを武士の鑑だと賞賛して赦そうとしたけれども、工藤祐経の息子である犬房丸が泣いて訴えたため、時致は梟首となった。この犬房丸は戦国時代に薩摩の島津氏と争った日向伊東氏の祖である。

かなり複雑な事件なので全ては語り尽くせないが、曾我兄弟の仇討ちの概要はこんな具合である。

かつての日本では仇討ちが美談として語られていた。戦前は学校の教科書に曽我物語が記載されていたくらいである。戦後、GHQ(連合国最高司令官総司令)の統治下における規制によって仇討ち関連の作品には厳しい検閲がかけられた。

『仇討ちの美談』は日本特有の武士的な文化の一つだが、現在日本人には理解し難い思想だと私は思う。或いはこれも洗脳の結果なのだろうか?

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