日本屈指の最恐心霊スポットと名高い犬鳴隧道&犬鳴峠に訪問する機会を得た。
犬鳴峠には以下のような都市伝説がある。
・必ず一枚は心霊写真が撮れる
・『日本国憲法は通じません』という看板がある
・トンネルの先に犬鳴村という集落があり部外者は問答無用で襲われ惨殺される
・絶対、帰り道で交通事故に合う
先に断っておくが、どれも根拠の無い出鱈目な噂である。
昔から有名なスポットではあったが、2020年(令和2)に放映されたホラー映画【犬鳴村】の影響力は強く更なる招かざる客を呼び寄せたようである。
私が訪問した当時はダム側の旧道入口が開いていたので普通に入れたが、現状どうなっているのか気になり宮若市のホームページを確認すると『トンネルに向かう旧道を含め現在は通行できません』とあった。
当然の処置だと思う。
犬鳴峠&旧犬鳴トンネルが心霊スポットと言われる理由
犬鳴峠は昔から不気味な峠道として知られていたと云う。
2000年9月の新聞によると、
心霊の噂が流れ始めたのは新犬鳴トンネルが開通した1975年以降(地元関係者が語る)。それから、旧道に夜の住人たちが出没し始めた。これが幽霊話に転化した
夜の住人とは旧道沿いに小屋を建てて住み着いた数人のホームレスと漢方薬店から依頼された業者のことらしい。
業者は付近にテントを張り、マムシを求めこの辺りを徘徊した。
心霊スポットとして広く知られるようになった決定的な原因は、1988年(昭和63)に起きた少年たちによるリンチ殺人事件だろう。
この事件については記事の最後に書いた。時間のある方は、是非最後まで読んでいただきたい。
犬鳴峠について
犬鳴は『いぬなき』或いは『いんなき』と読む。
犬鳴の由来は↓
【地名】江戸時代の資料である『筑前名所図絵』によると犬鳴の地名の由来が次のように書かれています。
『犬鳴山で猟師が犬をつれて猟をしていた。犬が激しく鳴き続けるので獲物がとれぬと、この犬を鉄砲で撃ったそうな。
ふと上を見上げると、1丈5、6尺(約5m)程の大蛇が姿をあらわした。
犬が鳴いて危険を知らせたものを、誤って撃ったことに猟師は後悔した。
猟師は鉄砲を捨てお坊さんになり、この山に犬の塔を立てたそうな。
それから犬鳴という』
犬鳴ダム 説明板より
他には、
・狼が谷の滝を越えられなくて鳴いた
・峠道があまりにきつくて犬が鳴いた
・古代時代に稲置の境界線にあった
※(いなぎ→いんなぎ→いんなき)という流れ
などの説がある。
稲置説が現実的だと思うが、どうだろうか。
犬鳴峠の旧地図
今昔マップ on the webより作成
左は犬鳴ダムが出来る前の犬鳴峠の地図。
昔、犬鳴谷と呼ばれる村落があり、住民は農林業やたたら製鉄でひっそりと生計を立てていた。
しかし、1986年(昭和61)に犬鳴ダムの底に沈んでしまった。
村落は確かに存在したが、地図を見比べると犬鳴隧道からかなり離れた位置にあったということがわかる。
犬鳴谷の史跡
犬鳴谷村落の奥地には犬鳴御別館という史跡が残っている。江戸時代末期に築かれた城跡である。
海辺にある福岡城が外国の脅威に曝された場合を考えて築城されたと伝わる。
↓に詳細を書いたので参考にどうぞ。
本題の犬鳴峠と犬鳴隧道の様子を見てみよう。
犬鳴峠の入口
上の写真が新犬鳴トンネルで下が旧道入口。(犬鳴ダム側)
反対の旧道入口は監視カメラ付きである。
犬鳴隧道へ!
こんな感じの道をひたすら歩く。
入口から15分程で犬鳴隧道に到着する。
途中にある犬鳴山登山道。
この日は霧と雨が酷くて視界が不明瞭だった。
オーブのようなものは、ただの雨粒だ。
不気味な案内板。
古犬ナキ峠が気になるな。
何かが見えてきた!
犬鳴隧道の坑門脇にある府縣道福丸箱崎線開通記念碑。
Wikipediaに碑文の詳細が引用されていたので、気になる方は↓のリンクへどうぞ。
犬鳴隧道の現在
ブロックで完全に塞がれている。
悪さする輩が多かったので塞いだのであろう。
史跡的な価値のあるトンネルなので実に勿体ない。
扁額には『犬鳴隧道』と刻まれている。
犬鳴峠に関する事故
・1992年6月28日午前6時頃
北九州市で少年10人が乗った自動車がコンクリートの電柱に激突。
運転していた少年が重体、助手席の少年は両足骨折、他8人も顔や手などに軽い怪我を負っている。
犬鳴峠で幽霊見物した帰りに起こした事故である。
ブレーキ痕がなかったので居眠り運転かスピードの出し過ぎだったのではないかと推測されている。
・2001年2月10日午前7時頃
国道202号線で若い男性5人が乗った軽自動車と2トントラックが正面衝突。
軽自動車の前部は大破。4人が死亡、1人が重体。トラックの運転手は足に軽傷を負った。
トラックの運転手によると『軽自動車が突然中央線を越えてきたためハンドルを切ったが間に合わなかった。』とのこと。
『犬鳴峠に幽霊を見に行こう』と言って出掛けたそうだ。
幽霊云々の話ではなく、単なる不注意か居眠り運転だろう。
犬鳴峠殺人事件について
さて、最後に犬鳴峠で起きた殺人事件ついて簡単に説明して終わろうと思う。
1988年(昭和63年)12月。
『ガールフレンドを送るのに車がないとカッコ悪い』という理由で少年5人は被害者の自動車を借りようとするが、拒絶される。
その対応にキレた少年たちは被害者を拉致監禁し暴行を繰り返した。
犯罪の発覚を恐れた少年たちは証拠隠滅を目論む。
まずは苅田港に向かい30分間暴行し崖から突き落とそうとするが、通行人が来たため場所を変えている。
少年らは田川市内のガソリンスタンドで1ℓのガソリンを購入し被害者と共に犬鳴峠へ。現場は旧犬鳴トンネルから約150m離れた路上。
被害者の口に布を詰め、両手両足をシャツで縛り、暴行を加え動かなくなった所にガソリンを掛けライターで着火し殺害した。
余りに凄惨な事件である。
終わりに
元々、暗いイメージのあった犬鳴峠がリンチ事件によって心霊スポットの地位を固めてしまった感じかな。しかしまぁ、むなくそ悪い事件ね…。
こういう場所は心霊現象よりも生きている人間の方がよっぽど恐ろしい。
私が言うのもおかしな話だが、犬鳴隧道に限らずひと気のない所にはなるべく行かないように心がけるべきだ。
犬鳴峠の帰りは交通事故に遭うと云われているが、何事もなく帰宅出来た。
コメント
幽霊を信じていないならさ…深夜1〜2時頃に一人でもう一度トンネルに行ってみれば?
殺人や災害とかで人が実際に亡くなった場所は本当にヤバいからね。
匿名 さま
コメントありがとうございます!
行きませんよ!
内容が薄いこのサイト
ttksd さま
そうですか。それは残念です。
人のデマなのを裏付けできちんと説明してるので私は評価したいです。
きっと素敵な場所だったのにゴミや落書き、ふざけてる人がいるので現実を書いて頂いてるのでいいと思います。
しかもまだ登山がが出来るのは驚きました!
批判コメントに負けないでください!
鮭 さま
心温まるコメントありがとうございます!
もしかするといつか完全に封鎖されてしまうかもしれないので、
その前に犬鳴山に登ってみたいと考えております。(他にも登山道入口あるかもしれませんが)
クールでいいよね♪
れの さま
コメントありがとうございます!
これは褒められているのかな?
学生時代(昭和60年代)に夜中にドライブがてらによく行きました。もう封鎖されているのですね。確かトンネル入口の銘板の横に女性の形に白く模様が浮かんでいた記憶があります。怖いもの見たさでしたが、とにかく不気味な場所でした。歩いてトンネルの出口まで行って帰ってくるのが定番の肝試し(笑)懐かしい思い出です。
candy さま
コメントありがとうございます!
はい、今は完全に封鎖され中に入ることが出来ません。
夕方に訪れたので恐怖は感じませんでしたが、もの凄い孤独感に襲われた記憶が残っています。
ひと気のない峠のトンネルは肝試しスポットになってしまいがちですね。
犬鳴隧道は残酷な事件が起きた場所ですからより一層その傾向が強くなってしまったみたいです。
説明しっかりしていて面白いんですね!\(^o^)/
批判コメントに負けないで下さい!応援してます!
羽化 さま
ありがとうございます。
励みになります!
是非、またコメントください!
あそこへは谷山の清滝脇道から入る方法があります。もう何十年も整備はされてませんが、確かにあります。
匿名 さま
『あそこ』とは?
柳原集落のことでしょうか?
また、犬鳴谷村の遺構ならダムに沈んだ橋などが見れますよ。(増水時は無理かも)
私も10年ほど前にダム底の村の跡地、橋の跡などを見て回ったので懐かしくなりました。
封鎖されてしまった旧道入口側奥の集落の人も引っ越したんでしょうかね~…
山歩きがてら見に行ってみたいものです。
ちんぱん さま
コメントありがとうございます!
ダム底の遺構を見るとなんとも言えない気分になります。
ワクワク感と虚無感が合わさったような。
犬鳴峠&トンネルがこれだけ有名な心霊スポットになってしまったので、
かなり住みづらい環境になってしまったのは間違いないと思います。
旧犬鳴トンネルは昔から肝試しに行く人が絶えず、とりわけ地元のヤンキーたちは度胸試しに頻繁に訪れていたようで、夜間は絶対に行くな、と言われていました。まさに幽霊よりも人間のほうが怖いというわけですね。
例の殺人事件にまつわる怪奇現象、という程の事でも無いのですが、オカルト板やソッチ系のサイトで話題になると、それなりの頻度で事件そのものをフィクション扱いする書き込みがあったりします。当時の地元中高生では、ヤクザ、スケープゴート等をキーワードにした、筑豊地方の闇が垣間見える怖い噂が流れていたのをよく記憶しています。
匿名 さま
私も幽霊より人間のほうが怖いと思います。
>当時の地元中高生では、ヤクザ、スケープゴート等をキーワードにした、筑豊地方の闇が垣間見える怖い噂が流れていたのをよく記憶しています。
これがネットで広まって現在に至るという感じですね。
私は行ったことはないのですが、以前はヤンキーと思われる人たちの落書きがいっぱいでそうとう不気味だったそうです。
いちちさんの写真を見るに、現在は穴も上まで塞がれ、落書きもすべて消されているようですね。
幽霊なんているわけないですが、恐ろしいのは幽霊ではなく人間です。
警察の手が届きにくい山奥などヤンキーによる無法地帯となりえます。
みなさん肝試しなどで夜中に行くのはやめましょう。
映画が公開されると行く人が増えるのではないかと危惧しております。
てゆ さま
コメントありがとうございます!
本当にその通りだと思います。
常軌を逸してしまった人間の残酷さに果てはありません。
心霊ブームが去った昨今ですが、映画が放映されたら間違いなく招かざる客が増えると思います。
恐らくデメリットしかないので困ったものです。
Youtube上で「取り憑かれた」だのと騒いでるYoutuberもいるくらいですからね
もう心霊スポットとしてのイメージの払拭は不可能に近いんでしょうけど、根拠のない噂話をさも真実のように動画にするのは止めてほしいですよね
実際は何てことない自然豊かな場所なんですけどね
オオツカトモヤ さま
コメントありがとうございます!
そう言った方がインパクトあるので観覧数が増えるのでしょうね。
くそ真面目に事実を述べると何故か叩かれたりしますからね。
ほんと自然が豊かでいいところだと思います!
実際の写真や地理、心霊スポットのルーツや歴史などを確かな情報を集めて載せていて、その上での冷静な感想が素晴らしい。
そして無駄に恐怖を煽り立てるような事もなく、閲覧者が知りたい情報をスッキリと飲み込めるので非常に良い。
RW 様
コメントありがとうございます!
そのように読んでいただけると、とても嬉しいです。
『つまらない』的な反応が少なくないので…。
風情があって綺麗な場所ですね。
ちょっと行ってみたいかも。
何でもかんでも「霊」の仕業にする無神経な連中には腹が立ちます。
匿名 さま
コメントありがとうございます。
ダムの両サイドを走る道を登った先にある犬鳴御別館は見ものです!
>何でもかんでも「霊」の仕業にする無神経な連中には腹が立ちます。
霊の仕業にしたほうが何かと盛り上がりますからね。
地元民からしたら 旧隧道は取り壊すべきと思います。予備の道路としての機能もないし、治安面の観点からです。
匿名 さま
コメントありがとうございます。
そうですね。史跡的な意味合いで残すのなら徹底的に守るべきですし、
今見たいに中途半端に残すくらいなら壊してしまった方がよいかもしれませんね。
僕のお父さんが犬鳴トンネルへ行ったあとに、お父さんの友達が亡くなったと言っていました。本当にあそこは行かない方がいいですよ…
チキチー 様
コメントありがとうございます!
隧道史跡としては最高のスポットなんですけど、
例の殺人事件で心霊スポットとして箔が付いてしまいましたね…。
霊より人間の方が怖いと教えてくれる場所です。
もうだれか言ってるかもしれないけど犬鳴の由来は方向感覚の優れた犬でさえ犬鳴峠に入ると道に迷って鳴くから犬鳴と呼ばれるようになったとかいう説もあるらしいです。
匿名さん
コメントありがとうございます!
そのような説もあるのですね。
興味深いです!
はじめまして。犬鳴トンネルが立ち入り禁止なのに
なぜあんなブロックなんかで中途半端に封鎖してるのかが
気になってました。誰も入れたくないならもっとしっかり
封鎖すればいいのに…。逆に不気味ですね。
クロさん
コメントありがとうございます!
はじめまして。
今はどうなっているか正確なことは分かりませんが、登山道があるためダム側のゲートからは入れるようになっていたようです。
あのブロックが気味悪さを助長している感はありますね
いちのまるさん初めまして、この犬鳴峠付近のことを客観的にお伝えしていただきありがとうございます。
特に御別館の成り立ちなどの正しい歴史の説明は痛み入ります。
私は現住の地元の住人です。
この場をお借りして犬鳴峠やその付近のことについて、思い出話しを交えて少しお話させて下さい。
この峠道は犬鳴ダムができる前は国鉄バス(今もJR九州バスとして健在)に乗ってつづら折りの峠道を超えて福岡市内まで(バスの終点はあの立派な博多駅)行ってました。
当時は個人所有の車が少ないこともあり直方、宮田、若宮の住民が博多に行く為の重要な道路と公共交通で朝夕のバスは満員状態でした。
犬鳴隧道(旧犬鳴トンネル)もバスや車で数えきれないほど通りました。
春には山桜が咲き道幅の狭い峠道をバスはゆっくり登り下りして博多に行ったり故郷に帰ってくる。
峠道の頂上付近にある犬鳴トンネルは、そんな私達の往来を温かく見守ってくれているようで、この上なく愛着が有りました。
また、ダム底に沈んだ旧峠の登り口に司書橋と言うバス停がありそこから犬鳴川の源流付近まで川沿いに吉川の犬鳴地区に続く道があって途中の旧小学校跡地のグラウンドで夏場は子供会でキャンプしたり、川遊びしたり、奥の方には親戚が住んでいたので泊り掛けで遊びに行ったり、私の子供時代の自然に囲まれた本当に楽しい思い出ばかりのところなのです。
緑深い森林と清流のある癒される空間だったのです。
それが、いつのまにか、心無い人達の仕業や何の根拠もない流言飛語で心霊スポットなどと言われ残念で仕方ありません
犬鳴村という映画は全くのフィクションなのに地名(犬鳴)を使い、しかも
試写会は地元の廃校となった小学校で行い、それに市長や行政までも登場し
宮若市の名前が売れれば良いなどと悪乗りする始末、故郷を汚されたようで悲しくて仕方ありませんでした。
皆さん、自分の故郷や住んでいる場所が心霊スポットなどと言われ、興味本位の人が訪れて騒いだり落書きやゴミが散乱したりしたらうれしいですか?
このダム付近も、キャンプや川遊びに家族連れで来られるような場所のはず
なのに「怖い」ところのレッテルを貼られてとても残念でただただ悲しいばかりです。決してそんなところではありません。
この近くには温泉もありますし人々も優しくて穏やかに暮らしていますよ。
地域の美味しい野菜やお米の販売所もありますので、癒しのスポットにお越し下さいませ。
追い出し猫ファン 様
コメントありがとうございます!
>犬鳴村という映画は全くのフィクションなのに地名(犬鳴)を使い、しかも
試写会は地元の廃校となった小学校で行い、それに市長や行政までも登場し
宮若市の名前が売れれば良いなどと悪乗りする始末、故郷を汚されたようで悲しくて仕方ありませんでした。
これは私も『…。』となりました。
行政も加担していた部分があるとは驚きです
歴史のある場所ですからね。
>また、ダム底に沈んだ旧峠の登り口に司書橋と言うバス停がありそこから犬鳴川の源流付近まで川沿いに吉川の犬鳴地区に続く道があって途中の旧小学校跡地のグラウンドで夏場は子供会でキャンプしたり、川遊びしたり、奥の方には親戚が住んでいたので泊り掛けで遊びに行ったり、私の子供時代の自然に囲まれた本当に楽しい思い出ばかりのところなのです。
こちらは現地の方しか知り得ない情報ですね!
貴重な情報本当にありがとうございます。