受験生のパワースポット・合角ダムへ!心霊の噂もあるみたいだけれど……

合角ダム

埼玉県秩父市の合角ダム。

洪水防止・上水道用水などの確保を企図して2001年(平成13)に竣工された多目的ダムである。

これで『かっかく』と読むのだが、これは水没した地区の名称で、添付画像に写る合角漣大橋の下あたりにその集落はあったそうだ。

水没集落は日尾・合角・塚越・女形で計75世帯が立ち退きを余儀なくされた。

 

『村とダム・没する秩父の暮らし』を読んで

合角ダム

今回、合角ダムを調べるに当たって、山口美智子さんの『村とダム』を拝読した。

合角ダムに沈む前の集落を数年かけて取材し、現地の方々から様々な情報を引き出て水没世帯の生の声を綴った名著である。

水没に関する問題だけでなく、秩父の山奥で先祖代々暮らし続けてきた困窮した民衆の生活事情や秩父事件勃発当時を生きていた人々の話などが秩父弁で掲載されており、歴史書としてその価値は高い。間違いなく後世に残すべき書物である。

合角ダムは心霊スポットなのか?

合角ダム

さて、私の使命は心霊スポットの噂の事実を紹介することにある。

残念ながら私はお会いできなかったけれど、合角ダムには幽霊が出るらしい。

前述した水没集落の存在は少なからず幽霊の噂に影響を与えていると思う。ダム系心霊スポットの歴史を調べるとそこそこの確率で集落が沈められている。人の営みがあった場所が水底に沈んでいるのを想像すると何となく暗いイメージを抱いてしまうのは私だけだろうか。

幽霊ではなく妖怪の類の伝説だが、戸神重明さんの著書『怪談標本箱 毒ノ華』に合角方面から天狗の火柱が上がったという話が載っている。なるほど、これは合角集落にあった『お天狗様(神社?)』と『天狗岩』が由来しているに違いない。

 

合角ダムに関する事故や事件

合角ダム

秩父で起きた歴史的な事件と言えば、1884年(明治17)の秩父事件は外せない。

『村とダム・没する秩父の暮らし』で語られている秩父事件の情景を少しだけ引用しよう。

秋も終わり頃の寒みぃ日に、暴徒が押し寄せて来るっつうんで質屋の清三郎は、この奥の小室にある親戚の家ぃ逃げ込んだんだとさあー。
(中略)
それでお内儀さんの方は自分ん家の屋根裏へ逃げ込んだんだとさあー。
そうしたら暴徒が屋根裏へ刀や槍なんか突っ通したんだとさあー。
だからお内儀さんは生きた心地がしなかったつうよう。

山口美智子 著 『村とダム・水没する秩父の暮らし』31頁 関口リキより

むかし本家では関口清三郎って人が高利貸しをやってたんで、秩父暴徒に明治の頃やられらんだいねえ。
本家はあんとき焼き打ちにゃああわなかったけど、暴徒が裏の川原へ簞笥なんか放り落として、えら証文なんか焼いたんだよ。
(中略)
そんとき本家の清三郎お爺は証文を持ってるだけ持って、小室の親戚の方へ逃げたんだいなあ。

山口美智子 著 『村とダム・水没する秩父の暮らし』57頁 関口土也より

昔は暴徒の話をよく聞きましたけど、今だからみんな秩父事件だなんて言っていますが、私らが子供の頃は暴徒ですよ。
秩父事件だなって格好つけた呼び名はあとで誰かがつけたんでしょう。
(中略)
うちの爺さんが一緒に『家だきゃあ焼かねえでくれ』って暴徒に頼んだ。なんつう話を聞いていますが。
そのとき暴徒は『家を焼くなあ勘弁するけど、家財は助けねえ』って、家財道具を裏の崖から放り落として川原で焼いてしまった。なんつう話を聞いていますよ。

山口美智子 著 『村とダム・水没する秩父の暮らし』57頁 強矢虎之助より

お爺さんは宮本小泉つって、秩父暴徒のとき雑兵で連れ出されて、刀を吊るって国神の椋神社まで行ったんだけど、どうも雲ゆきが悪くなってきて危ねえからと思い、お爺さんだって死ぬか生きるか必死だったから、途中の山ん中で『糞小便の用たしがしてえ』って嘘を言って、沢を跳び越し山を幾つも越へやっと合角まで帰えってきたんだよ。
そうでもしなけりゃあ高崎の兵隊さんと戦うわけだったかんなあ。

山口美智子 著 『村とダム・水没する秩父の暮らし』187頁 宮本正雄より

当事者たちの声が生々しくの残っていることに驚きを隠せない。国の政策により重税や借金を課せられた秩父の農民たちが蜂起した秩父事件。事件の結果、1万名以上もの人々が罰せられ、首謀者7名に死刑判決が下り、政府側も数名殉職している。

いちのまる
いちのまる

この辺りで起こった事件なので紹介しましたが、合角ダムの心霊の噂と秩父事件に繋がりはないと思います。しかしまぁ、ダムに沈められた集落の人々の記憶がこれだけ鮮明に残っているのは感慨深い。

 

合角ダム

他に事件や事故が起きてないか調べてみたが、特筆すべきものは無かった。周辺に住居が点在しているため、ある程度は監視の目が行き届いているのかもしれない。

引き続き調査は続けようかと考えている。

何か合角ダムに纏わる事故や事件について御存知の方がいらっしゃればご教授願いたい。

 

終わりに

合角ダム

合角ダム、西秩父桃湖と刻まれたこれらの岩は、湖底に沈む鹿野町倉尾地区にあったものである。

ここでは詳しく説明しないが、ダム湖の命名に当って心霊とは別の意味の曰くが残っている。『西秩父桃湖 由来』でgoogle検索すると興味深い記事が見つかるので知りたい方は検索してみるといいだろう。

他に合角ダムに纏わる話と言えば、合角が『合格』と読めることから受験生の験担ぎとして一種のパワースポットになっていることぐらいだろうか。心霊スポットなんて言われるよりはパワースポットと言われる方が断然良いと思う。

コメント

  1. 匿名 より:

    パワースポットというもてはやしは別段好きではないのですが
    >心霊スポットなんて言われるよりはパワースポットの方が断然良いですね。
    これについては全くその通り!
    マイナスで知られるよりプラスで知られる方がはるかに良いですね。

    秩父事件に関する引用も参考になりました。
    それぞれの立場や場面で話が立体的になっていきますね。

    • いちのまる より:

      匿名さん

      コメントありがとうございます!
      どうせならマイナスイメージの心霊スポットよりはパワースポットの方がいいですよね。
      秩父事件と心霊の噂に関係はないでしょうが、折角なので引用しました。

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